LegalOn Technologies Engineering Blog

LegalOn Technologies 開発チームによるブログです。

AI がセールスを変革!「見込み顧客の予測」から「なぜ有望か」の解説までを実現した話

はじめに

こんにちは。Data Analyst の Alicia です。

多くの企業の営業現場では日々、「どの顧客が有望なのか?」「なぜその顧客が有望なのか?」という 2 つの問いに直面することが多いのではないでしょうか。

私たちは、この 2 つの問いに納得感をもって答えられるように、予測 AI と生成 AI を融合させた新しい仕組みを開発・導入しました。

  • 予測AI (上図左側):顧客のメタ情報と行動データを基に、「商談化の可能性」をスコアリングし、スコアが高い有望顧客を特定。
  • 生成AI (上図右側):「なぜその顧客が有望なのか」という有望の根拠を、分かりやすい自然な日本語で生成。

この「スコア(有望顧客)」と「ファクター(有望の根拠)」をセットで提供する仕組みを社内で導入した結果、実際に商談化率が向上し、部門間の連携コストが削減され、具体的なビジネス成果を上げることができました。

この記事では、AI の分析結果をいかにして現場の「確信」へと変え、成果につなげていったのか、その実践的なアプローチの全体像をご紹介します。

課題とその背景

多くの企業の営業・マーケティング部門が直面する共通の課題。それは、日々増え続ける膨大な見込み顧客リストの扱い方です。

この膨大なリストを前に、現場の営業担当者は、自身の勘や経験を頼りに、以下の2つの問いに向き合い続けてきました。

  1. 「今、本当に購入(商談化)可能性が高いのは誰なのか?」
  2. なぜ、その顧客が有望だと言えるのか?」

1つ目の「誰が?」を特定するだけでも難しいですが、2つ目の「なぜ?」という根拠まで説明するのは、さらに難しくなります。

データに基づいた明確な答えを持てないまま進めてしまうと、営業活動の効率が下がったり、貴重な商談機会の損失に繋がりかねません。私たちは、この根本的な課題を解決することを目指しました。

解決策/解決方法

私たちは、先ほどの2つの問いに明確な答えを出すため、予測AIと生成AIを融合させたハイブリッドな仕組みを開発しました。

この仕組みは、2つの AI が以下の役割を分担しています。

  1. 予測AI(機械学習):「誰が有望か?」に答える 顧客の行動データや属性データを分析し、将来の商談化確率を「スコア」として算出します。スコアが一定基準を超えた顧客を「MQL (Marketing Qualified Lead)」、すなわち有望顧客として特定します。
  2. 生成AI (Gemini) :「なぜ有望か?」に答える MQL と判定された顧客に対し、生成 AI である Gemini がスコアが高かった理由を、営業担当者が理解できる自然な日本語の解説文として自動生成します。私たちは、この解説文を「MQL ファクター」と名付けました。

現場に「答え」と「根拠」を届ける

では、この仕組みが営業の現場でどのように活用されているか、実際の画面をご覧ください。有望顧客のリストに、予測 AI が算出した「MQL スコア」と、生成 AI が作成した「MQL ファクター」が一緒に表示されています。

営業担当者が毎日確認する Salesforce の画面

リストの一番上の顧客の MQL ファクターを、さらに拡大して見てみましょう。

  • スコア: 78
  • 理由: キャンペーンに参加しており、過去3件の商談にも関与しています。

このように、数値(スコア)だけでなく、AI がなぜこの顧客を有望だと判断したのか、その具体的な根拠(理由)までが分かりやすく解説されています。

この「スコア」と「MQL ファクター」をセットで提供することで、営業担当者は AI の判断に迷いがなくなり、データに裏付けられたた確信を持って、迅速かつ的確な顧客アプローチが可能になりました。

仕組みを支える Google Cloud アーキテクチャ

この「スコア」と「MQL ファクター」を毎日自動で生成し、現場に届ける仕組みは、Google Cloud の各種サービスを連携させて構築しています。

データの収集・分析から、AI による処理、そして Salesforce などのビジネスツールへの配信まで、一気通貫のパイプラインを実現しました。

このパイプラインを構成する主要なコンポーネントは以下の通りです。

  • データ基盤: BigQuery この仕組みの「中心」となるのが BigQuery です。顧客の行動や属性に関するあらゆるデータを一箇所に集約し、高速に処理するデータ分析基盤として機能します。
  • 自動化・実行基盤: Cloud Run パイプライン全体を自動で動かすのが Cloud Run です。毎朝定時に起動し、「モデル学習」「スコア予測」「MQL ファクター生成」「外部ツール連携」という一連のジョブを順番に実行します。
  • モデル・成果物保管: Cloud Storage 学習済みの機械学習モデルや、処理結果のデータなどは Cloud Storage に安全に保管しています。
  • 解説文の生成: Gemini (BigQuery ML 経由) そして、このシステムの心臓部が Gemini です。私たちは BigQuery ML の ML.GENERATE_TEXT 関数を経由して、Vertex AI 上で稼働する Gemini モデルを呼び出し、MQL ファクターを生成しています。

なぜ Gemini (BigQuery ML 連携) だったのか

私たちが Gemini を採用したのには、BigQuery ML の ML.GENERATE_TEXT 関数がもたらす、2つの決定的な強みがあったからです。

  1. 圧倒的な処理速度

    ML.GENERATE_TEXT 関数を使うことで、数百〜数千件の顧客データ(MQL ファクター生成指示)を、個別の API 呼び出しではなく、単一の SQL クエリで一括処理できるようになりました。これにより、日次バッチ処理にかかっていた時間を大幅に短縮できました。

  2. 堅牢なセキュリティ MQL ファクターを生成する際、インプットとなる顧客データが BigQuery の外に出ることがありません。外部 API と顧客データをやり取りする必要がないため、セキュリティ要件をシンプルに満たすことができました。

このように、私たちは Google Cloud のマネージドサービスを組み合わせることで、高速かつセキュアな AI パイプラインを効率的に構築しました。

ビジネスインパクトと次なる展開

この「予測 AI(MQL スコア)」と「生成 AI(MQL ファクター)」を融合させた仕組みは、営業の活動量と質の両面で、具体的なビジネス成果を出しています。

もたらされたビジネスインパクト

まず、DID(差分の差分法:Difference in Differences)を用いた効果検証の結果、予測 AI によるスコアリングを導入したことで、営業チーム全体の架電(顧客への電話)数は 9.8% 増加し、商談化率も 15% 向上したことが確認できました。

さらに、Gemini が「なぜこの顧客が有望なのか (MQL ファクター)」を説明する仕組みを追加したことで、成果はさらに加速しています。

  • 営業からマーケティングへの「なぜこの顧客が MQL なのか?」という部門間の確認コストが、ほぼゼロになりました。
  • 架電根拠が明確になったことで営業の「確信」が生まれ、初動が速まり、チーム全体の架電数はさらに 7% 増加しました。

次なる展開:AI による「架電戦略」の支援

私たちの取り組みは、これで終わりではありません。 今後は、AI が営業担当者の「架電戦略」を支援するアプローチを目指しています。

具体的には、今回生成した「MQL ファクター」(顧客が有望である理由)をインプットとして、AI が顧客ごとに最適化されたトークスクリプトを自動生成します。

これにより、架電の準備時間をさらに短縮すると同時に、提案の質を高め、商談化率のさらなる向上を実現したいと考えています。

まとめ

この記事では、営業現場の「どの顧客が有望か?(スコア)」そして「なぜ有望か?(理由)」という2つの問いに明確な答えを出すため、予測 AI と生成 AI (Gemini) を融合させた取り組みをご紹介しました。

予測 AI が「有望顧客」を出すだけでなく、生成 AI が「根拠」を自然な日本語(MQL ファクター)で解説し、現場の「確信」を生み出したことが、ビジネス成果につながりました。

本記事ではプロジェクトの全体像をご紹介しましたが、「MQL ファクター」を生成する「AI のブラックボックス問題」をどう解いたか、その技術的な裏側(SHAP 分析やプロンプト エンジニアリング)については、次回の記事で詳しく解説しています。

謝辞

この取り組みの実現にあたり、精度の高いデータ基盤の構築や AI モデルの選定で貢献してくれたデータエンジニアリングチーム、そして AI を信頼し貴重なフィードバックをくれたマーケティングチームとインサイドセールスチームに深く感謝します。 また、本取り組みは Google 様主催「第 4 回 生成 AI Innovation Awards」ファイナリストに選出されました。応募に際し、レビューと助言をくださった広報チームと CTOオフィスの皆さんにも、心より感謝申し上げます。

仲間募集!

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