はじめに
こんにちは!株式会社LegalOn Technologies、SET(Software Engineer in Test)の引持(@rmochioo)です。普段は自動テストの推進やQA部門横断の施策に取り組んでいます。
2026年3月20日(金・祝)、東京ビッグサイト会議棟にて「ソフトウェアテストシンポジウムJaSST’26 Tokyo」が開催されました。私は「QAプロセスAI支援ツールキットの導入とその効果について」というタイトルで、登壇しました。
本記事では、当日お話しした内容についてと、印象に残った発表を幾つかピックアップしてご紹介したいと思います。
JaSSTについて
JaSST(ジャスト)は、NPO法人ASTER (ソフトウェアテスト技術振興協会)が運営する、ソフトウェア業界全体のテスト技術力の向上と普及を目指すソフトウェアテストシンポジウムです。
日本各地で地域ごとに開催されており、JaSST Kyushu、JaSST Kansai、JaSST Tohokuなどがあり、今回登壇したのは、毎年東京で開催される JaSST Tokyo です。
私自身、例年は聴講者として参加し、テストの事例や新しい取り組みから多くを学ばせていただいてきました。
今回は登壇者として参加することとなり、緊張もありましたが、非常に楽しみな気持ちで当日を迎えました。

発表について
内容としては、昨年の8月に以下のブログに公開したツールキットの話になります。
当時のブログでお伝えしたのは、主に以下の4点です。
- QA業務をAIで効率化する「QAプロセスAI支援ツールキット」を開発したこと
- コマンド一つでテストプロセスの各工程をAIがサポートすること
- AIとの対話を通して、テスト計画などの成果物を作成できること
- 当時はまだ検証段階であり、これから利用者の拡大を行っていくフェーズだったこと
今回の発表では、その後の全体導入で直面した課題や、それに対する改善、そして実際に得られた効果について時系列でお話しさせていただきました。
導入初期
その後、全体への導入を進め、コマンドも順次追加していきましたが、当初はあまり利用されない状態が続きました 。そこで、原因調査のため現場のQAエンジニアにヒアリングを行った結果、以下のような課題があることがわかりました。
- コマンド数が膨れ上がり、操作や依存関係が複雑になっていた
- 成果物管理をNotionにしていたことによる問題
- MCPサーバーを介した編集・生成に時間がかかる
- 次プロセスへの引き渡しに、都度リンクを入力するなどの手間がかかる
- そもそもツールキットの利用方法がわからない
これらの要因が重なり、結局「自分でやった方が早い」という心理的なハードルを生み、ツールキットが利用されない状況に繋がってしまっていました 。
改善
ヒアリングで発見した課題に対し、以下の改善を行いました。
コマンドの断捨離とプロセスの再定義
標準的なテストプロセス(計画 → 分析 → 設計 → 実装 → 実行)に合わせてコマンドの大幅な削減を行いました。 これにより依存関係がシンプルになり、ツールキットの使い勝手が向上しました。
成果物管理を「Notion」から「Git」へ
Notionで行なっていた成果物管理をMarkdownを利用し、Gitに変更を行いました。これにより成果物の編集、修正にMCPサーバを利用しなくて良くなり、出力のオーバーヘッド削減につながりました。また、副次的な効果としてGitHubを利用できるようになったことで、CIとの連携やプルリクエストでのレビューができるようになりました。
レビューコマンドの導入
Notionで行っていた成果物管理を、MarkdownファイルによるGit管理に変更しました。 これにより、成果物の編集や修正にMCPサーバーを介す必要がなくなり、出力のオーバーヘッド削減につながりました。 また、GitHubを活用することで、CI連携やプルリクエスト(PR)でのレビューが可能になるという副次的な効果も得られました。
観点のナレッジ化
人間が行ったレビューコメントをAIが取り込み、次回のレビューやテストプロセスに反映する仕組みを構築しました。 これにより、ツールキットを使えば使うほど組織のナレッジが蓄積されるサイクルを確立しました。
ハンズオンの実施
QAエンジニア全体を対象としたハンズオンを実施しました。 サンプルの施策を用いて、テスト計画から設計までの一連の流れを実際に体験してもらうことで、ツールの使いやすさと業務効率化のメリットを直接体感してもらいました 。
効果
前述の改善後のアンケートでは、6割以上のQAエンジニアが日々の業務フローに生成AIを組み込んでいるという回答を得られています 。また、8割以上のメンバーがAI活用によって業務時間が大幅に短縮されたと実感しており 、単なるツール利用に留まらず、自らの活用ノウハウを周囲へ共有・展開するような自律的な動きも生まれ始めています。
今後の展望を含めた詳しい内容については、当日発表したスライドをご覧ください。

運営スタッフの皆様には大変親切にサポートいただき、万全の状態で臨むことができました。 講演後も、聴講者の皆様から積極的にご質問をいただくなど、活発なやり取りの中で私自身も非常に楽しく有意義な時間を過ごせました。
印象に残った発表
私が聞いた発表の中から、印象に残ったものを3つ紹介します。
あなたのシステムの壊し方
Ubie株式会社の末村さんの発表です。
タイトルの通り、さまざまなシステムの壊し方を教えてくれています。「壊すことは何が起きるか(システムの挙動)を知ること」であり、QAにとってはシステムの仕組みや弱点を知る機会であると再認識しました。QAの視点から話されていたことで、非常にわかりやすく勉強になるお話しでした。私も積極的に壊していこうと思いました。
生成AIで速度と品質を両立する、QAエンジニア・開発者連携のAI協調型テストプロセス
エムスリー株式会社、草場さんの発表です。
QAエンジニアだけではなく、開発者も巻き込みながらAIと共にプロセス改善していく内容でした。弊社でもQAの知見をいかに開発チームへ浸透させるかは今後の重要なテーマであると感じており、非常に参考になるお話でした。
Beyond Quality Assurance -AIと拓くQAの未来像-
LINEヤフー株式会社の池之上さん、LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社の平田さんの発表です。
QA業務へのAI活用が注目される中、試行錯誤しても期待通りの効果が得られず、「取り組まなければならないのに、なぜか上手くいかない」という現場の葛藤(モヤモヤ)に焦点を当てた内容でした。こうした停滞感に対し、コーチング的アプローチを用いて内面から解決の糸口を探るといった内容でした。私自身は日々AIを推進していく立場だったので、現場のモヤモヤを置き去りにしていなかったか、自分自身の姿勢を省みる非常に心に刺さるセッションでした。
まとめ
今回のイベント全体を通して、多くの企業がQA業務における生成AI活用に本腰を入れていることを強く実感しました。少し前までは「何ができるか」を模索する試行錯誤のフェーズでしたが、現在は各社とも活用方法がある程度固まり、実務への実装フェーズへと移行し始めている印象を受けました。今後どうなっていくのかが非常に楽しみです。
この大きな舞台で発表した貴重な経験と、得られた数多くの知見を糧に、今後は社内でのAI活用をさらに一段上のステージへと引き上げていきたいと考えています。そのプロセスや成果も本ブログで発信していく予定です。ぜひ、次回の更新も見ていただけると幸いです。
謝辞
レビューいただいた岡登さん、島根さん、川上さん、時武さん、そして、JaSST運営スタッフの皆様、登壇の機会と当日の手厚いサポートをいただき、ありがとうございました。
仲間募集!
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