はじめに
LegalOn Technologiesが提供する「LegalOn: World Leading Legal AI」は、契約書ドラフト・レビューや案件の管理、法務相談まで、法務業務をワンストップで支援する革新的なサービスです。リリースから1年半、企画開始から約2年半が経った今、プロジェクト立ち上げの背景、開発の進め方、これまでの振り返りや今後の展望、さらには技術面での学びまでを、全9回にわたるブログシリーズとしてお届けしていきます。
記念すべき第1回となる本記事では、CEOの角田とCPOの谷口に、「LegalOn」を立ち上げる決断に至った背景、そしてそこに至るまでの挑戦について話を聞きました。
角田 望:代表取締役 執行役員・CEO
谷口 昌仁:執行役員・CPO

危機感から始まった製品戦略プロジェクトと「常識破り」の決断
— まずは、「LegalOn」を立ち上げることになった背景を教えてください。
角田 構想が始まったのは、2022年の年末でした。 正直なところ、その頃は会社の成長が鈍化していて、焦りを感じていました。全社的にこの危機感がちゃんと共有できているのか?「負け癖」がついてしまっているのではないか?といった課題意識もありました。 そこで、営業マネージャー陣に加えて谷口さんにも入ってもらい、2022年12月に2日間かけて課題を徹底的に洗い出す会議を行ったんです。
谷口 私が入社したのは2022年10月なんですが、最初に取り組んだ大きな仕事が、まさにこの会議でしたね(笑)。
角田 既存の組織体制や考え方に頼るだけでなく、違う視点を加えて新しいコンセプトをたくさん洗い出す必要があると思っていました。 ちょうどその頃、生成AI登場という大きな潮流もあり、私としては、今このタイミングでプロダクトを根本から見直さなければ、という強い思いがありました。
— そこからいくつかのプロジェクトが立ち上がったんですね。
谷口 いろんなプロジェクトやりましたねー。
角田 はい(笑)。2023年に入ってから、プロダクトブランド戦略、営業・マーケティング戦略、組織設計戦略など、複数のプロジェクトが同時に発足し、動き始めました。 「LegalOn」はその中の、製品戦略プロジェクトから生まれたもので、特に重たいプロジェクトでした。
— 製品戦略プロジェクトは、どのように進んでいったのでしょうか?
谷口 まず、プロジェクトメンバー全員に「今後、プロダクトをどうしていくべきか」というテーマで宿題が出され、それぞれが自分の意見をまとめて発表しました。その意見を整理するために、印刷すると6畳一間にもなる巨大なマインドマップを作ることになったんです。1週間ほぼ寝ずに徹夜で書き続けたのを覚えています(笑)。今でもそのマップ残っていますよ。


角田 このプロジェクトでは、あえてこれまで製品戦略に深く関わっていなかったメンバーをアサインしました。というのも、過去の枠組みにとらわれず、ゼロベースでプロダクトの将来像を見直したかったんです。
徹底的に追求した企画と、不可能を可能にした開発現場
— 当時の開発現場の雰囲気はどんな感じでしたか。
谷口 新しいプロダクトを作ることに対して、いろいろな意見はありましたが、私を含めたリーダー陣の間では相当議論を重ねたので、「それでもこれは絶対にやるべきだ」という共通認識ができていました。 開発メンバーに対しても、「なぜ今これが必要なのか」をしっかり伝えるために、時間を取って大プレゼンを行ったのを覚えています。あとは現場のマネージャー陣がモチベートしてくれていました。
角田 企画を2ヶ月で詰めたのもすごいですが、そこから1年で高いクオリティの状態でリリースまでできたのは本当に見事でした。
谷口 何かしらのものを出すこと自体はできたと思いますが、お客様から「前の方が良かった」と言われるようなデグレード(品質や体験の後退)だけは絶対に避けたかったんです。
角田 その点については、毎週のように議論してましたよね。
谷口 しましたね。何を維持して、何を削ぎ落とすか、最終的な落とし所はかなり悩みました。でも「ユーザーに必要な情報が自動でレコメンドされる」といった「LegalOn」の核となる機能は絶対にぶらさない。そのうえで、それ以外の部分を取捨選択しながら進めました。
— 正直、うまくいくと思っていましたか?
谷口 絶対いけるという自信はありましたね。 というのも、徹底した「エビデンスに基づく企画」を行っていたからです。 3,000サンプルのアンケートを取り、30~40社に実際にインタビューも行いました。自分たちが感じている課題は正しいのか、これらに対してどんな機能が必要なのかを検証した上で企画に落とし込んだので、「これは絶対にいける」と確信していました。
ここまで大規模にニーズ検証を行った企画は、当社では初めてだったのではないかと思います。この規模の企画を2ヶ月で作り込むのは通常不可能ですが、確かなエビデンスがあったからこそ、関係者のみんなが納得できるプロダクト企画が短期間で実現できたのだと思います。
角田 私はというと…正直「うまくいくかは分からない、でもうまくいかせないといけない」という重荷はありました(笑)。 でも、PRD(プロダクト要求仕様書)や要件定義、設計の内容を見ていくと、全体がきちんと言語化されて進んでいたので、「これは完成までいけるな」という手応えはありました。 今振り返ると、もし当時このプロジェクトをやっていなかったら、今頃どうなっていたか、想像するとぞっとします。
谷口 同じことをもう一度1年でやれと言われても、本当にできるか分からないですね(笑)。 あれだけ複雑で、しかも完成度の高いプロダクトが世に出ることって、普通ではまずあり得ないです。PRDの数は200以上にも及びました。それをすべて私が確認して、要件定義に落とし込むというのは、本当に膨大な作業でした。
— そんな中、無事にリリースされた時のお気持ちはいかがでしたか。
谷口 正直なところ、「様々なバグが出るだろう」「お客様に頭を下げに行くこともあるだろう」と覚悟していました。 でも、大きなバグが何も出なかったのは、エンジニアとQAチームが相当頑張ってくれたおかげです。当社のQAチームは、ダメなところはダメだと最後まで言い続け、それをエンジニアがきちんと直していく。その徹底ぶりが本当に良かったですね。最後まで品質を妥協しなかった。
角田 あのこだわりは、プロフェッショナルですね。
谷口 リリース後も、1日1機能のペースで継続的に機能開発を進めています。これは普通ではなかなかできることではありません。
自分たちが開発した機能に対して、お客様からの良いフィードバックが直接返ってくることで、エンジニア自身が「作ることが楽しい」と感じられる。受託っぽさを極力なくし、「自分たちで考え、自分たちで出し、すぐに反応が返ってくる」──そんな運営を心がけてきました。

ディズニー映画「ベイマックス」に描かれた究極のユーザー体験
— 「LegalOn」で実現したかったユーザー体験について教えてください。
谷口 これまでのSaaSやプロダクトは、ユーザー自身が作業をすることが前提になっていました。でも私たちが目指したのは、まるで畑があらかじめ耕されているように、必要な情報が事前に全て揃っている状態です。例えば、法務担当者が本当にやりたい「レビュー」をするためには、事前に契約書を読み込んだり、過去の類似案件や最新の議論をリサーチしたりと、付加価値の低い準備作業をたくさん行う必要がある。これらは非常に面倒で、時間もかかるし、「本当に抜け漏れがないか?」という不安もつきまといます。この体験性を変えたかった。
事業部から送られてきたメールを開けば、それに必要な道具がすべて揃っていて、一番やりたい「審査」のところにだけ集中できる。そんな体験をどうやって作るかが、一番こだわったところです。 実際にお客様にこのコンセプトを話すと、「そんな夢みたいな世界が来たら、本当に涙が出ます」とおっしゃっていただけました。
あるとき自宅で見ていたディズニー映画『ベイマックス』は、相手が何も言わなくても自動で目の前の人をスキャンし、身体に問題があれば最適な治療を提案してくれる。「法務にベイマックスがいたら、めちゃくちゃ楽だな」と(笑)。 案件が来たらそれを自動でスキャンして、類似契約やリスク、修正案まで提示してくれる。そんな「リーガル界のベイマックス」を作ろう、という思いでアンケートやインタビューを重ねていきました。結果として返ってきたのは、「最高です」という反応ばかりでした。今で言う「アンビエントエージェント(ユーザーの指示を待つことなく、周囲の状況やイベントを常に監視し、自動的にタスクを実行するAIシステム)」に相当するユーザー体験ですね。
角田 私もユーザーの立場から、「こんなことが実現できたら、どれだけ助かるか」とずっと思っていました。
そしてちょうどそのタイミングで、生成AIの技術が登場し始めた。このAI技術を使ってコンセプトを実現できるという確信が持てました。

AIとの相乗効果と「LegalOn」の将来性
— リリースから1年が経って、予想外だったことはありましたか?
谷口 「LegalOn」のコンセプトは元々AIエージェントを想定していたのですが、世の中のAIエージェントの技術トレンドがこんなに早く来るとは思いませんでしたね。特に生成AIまわりの一般化が一気に進んで、「あれ、差が思ったより縮まってきたかも?」と感じる場面もあります。
角田 それでも私は、「LegalOn」には圧倒的な優位性があると思っています。 今のAIエージェント技術やLLM(大規模言語モデル)と、「LegalOn」のプラットフォームの組み合わせは非常に相性が良いと考えていて。従来のプロダクトのままだったら、ここまで質の高いエージェント体験は提供できなかったはずです。
谷口 そうですね。 「LegalOn」は、ユーザーがプロセスを細かく指示するのではなく、AIエージェントが対話を通じてプロセスを柔軟に変えていくという方向性を目指しています。また、データの構造についても、「リーガルドキュメントグラフ」というコンセプトで整備しており、AIエージェントがスムーズに動くための土台ができています。これにより、エージェント技術の進化を自然に取り込める構造になっているんです。
角田 AIを最大限活用するというコンセプトをさらに強化し、拡張性の高いプラットフォーム構造と組み合わせていることは、今の「LegalOn」にとって大きな強みです。この技術トレンドと生成AIの登場が、絶妙なタイミングで重なったのは、本当に運が良かったと感じています。
個人的には、「LegalOn」はグローバルで法務領域のナンバーワンを狙えるプロダクトだと思っています。世界のニーズを捉えながら、AIと掛け合わせて進化し続けるこの開発体制は、ものすごくポテンシャルを感じますし、私自身もワクワクしています。
世界のリーガルプラクティスを変革するようなプロダクトになるだろうと期待しています。

まとめ
「LegalOn」は、徹底したユーザー視点と、誰もが無理だと思った開発スピードを両立させ、構想からわずか1年でのリリースを実現しました。企画段階での圧倒的な検証量、200本を超えるPRD、そして品質に一切妥協しない開発チームの姿勢が、今の「LegalOn」の礎となっています。
リリース後も、毎週のように機能を届け続けるその姿勢は変わりません。 最先端のAI技術を取り入れながら、「LegalOn」はこれからも法務の常識を塗り替え、グローバルでの挑戦を加速していきます。
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