こんにちは。LegalOn Technologiesでソフトウェアエンジニアをしている浅野(@takuya_b / @takuya_a)です。最近は検索推薦というよりはAIエンジニアっぽいことをしています。
このたび、社内の全プロダクトマネージャー・デザイナー・エンジニア・EM向けに「速習 AIエージェント入門」というタイトルで、AIエージェント開発の社内セミナーを担当しました。その発表で使用したスライドを、弊社のSpeaker Deckに公開しましたので共有します。
昨年、弊社のブログ「社内資料「プロダクトマネージャーのための検索推薦システム入門」を公開します」の中で検索推薦技術の入門講座のスライドを公開しましたが、そのAIエージェント版とも言えるものになっています。
この記事では、AIエージェントの社内セミナーを開催することになった経緯や、その内容について簡単に紹介します。また、弊社でのAIエンジニアリングの今後の取り組みについても軽く触れます。
背景
LLMの性能向上が呼び水となり、AIエージェントの技術はこの1年ほどで急激な進展を遂げました。コーディングエージェントの性能向上によって、エンジニアリングのあり方が変化しつつあることは皆さんもご存知の通りです。
コーディングだけでなく、現在進行形で様々なエージェントが誕生し、まさに破壊的イノベーションとして世の中を変えていこうとしています。弊社も、ユーザーに新しい価値を届けるために、様々な領域でエージェント開発を加速させようとしている真っ最中です1。
社内や業界での課題
エージェント技術が急速に進化する一方で、実際のエージェント開発の現場には、以下のような課題があることが見えてきました。
- 情報が溢れかえっていて、エージェント技術の基礎となる考え方を身につけるまでが大変
- とくに初学者にとってはどこから手をつけていいかわからない
- エージェント関連の用語やその言葉の意味について、共通認識が確立されていない
- 人によって言葉遣いや、その意味している内容が一致せず、コミュニケーションが非効率的
弊社だけでなく、多くの組織でも大なり小なり同様の課題があるのではないでしょうか。
社内セミナーによる共通理解の促進
上記の課題を解決するために、AIエージェントに関する初歩的な内容を1つのスライドにまとめ、1時間程度の社内セミナーを実施することにしました。この内容を仮の土台とすることで、社内の「エージェントってこういうものだよね」「エージェントってこう作ればいいよね」という認識を揃えることが目的です。
AIエージェント技術は未成熟かつ急速に進化している領域であり、その技術的な制約が、プロダクトのUI/UXにも大きく影響します。そのため、エージェント開発においては、すべての開発系職種が共通の理解を持つことが、作るもののイメージをぶらさないためにも重要です2。
そこで、プロダクトマネージャー(以下PdM)、デザイナー、エンジニア、EMといった開発系の全職種をターゲットにしました。内容については扱うトピックを絞り、できるだけ各技術の込み入った詳細に立ち入らないように努めました。
社内セミナーで取り上げたトピック
この社内セミナー「速習 AIエージェント入門」では、以下のようなトピックについて解説しました。
- 「エージェント」という用語の誤解と認識合わせ
- AI研究の歴史、エージェントの定義・特性
- エージェントの概要
- 内部構造、推論ループ(エージェントループ)
- エージェントの設計パターンとAgentic Workflow
- ReActエージェント、ワークフローとエージェント
- マルチエージェントの必要性と設計パターン
- Context Rot、Routingパターン、Supervisorパターン、エージェント間通信
- エージェントとツールの設計・実装
- エージェントフレームワーク、MCP、ツールの粒度
- エージェントと人間のインタラクション
- チャットUI、Human-in-the-Loop、Generative UI、アンビエントエージェント
- エージェントシステムのセキュリティ対策
- プロンプトインジェクション、OWASP Top 10
資料の作成にあたっては、さまざまな書籍や記事、論文などの情報リソースを読み込んで、可能な限り中立的な立場でまとめることを心がけました。スライドというメディアの形式上、細かいところまでは説明しきれませんでしたが、土台となる知識やメンタルモデルさえあれば生成AIの力を借りながら独学することは可能でしょう。
セミナー開催当日の様子
この講座は、質疑や議論の内容がより深まるように、11/5にPdM・デザイナー向けの回、11/13にエンジニア・EM向けの回、と分けて実施しました。AIエージェント開発への関心の高まりからか、どちらの回にも非常に多くの参加者が集まり(1回目は約40人、2回目が約150人)、たくさんの有意義な質問やコメントをもらえました。
その時の様子はLegalOn Nowで記事になっていますので、よろしければご覧ください。
今後の取り組み
時間の都合もあり、エージェントの記憶、計画、内省、コンテキストエンジニアリング、評価といった、やや高度なトピックについては取り扱うことができませんでした。これらの分野はまた別途、社内の勉強会などで個別に取り上げ、フォローしていければと考えています。
さらに、こういった知識やノウハウの共有のため、社内でAIエンジニアリングギルドというコミュニティを立ち上げました。このギルド活動については今後、LegalOn NowもしくはEngineering Blogで詳しくご紹介する予定です。
仲間募集!
LegalOn Technologiesでは、一緒にAIエージェントの開発に取り組んでくださる仲間を募集しています。AIエージェント開発を通じて、一緒に世の中の課題を解決していきましょう!
謝辞
- この講座のきっかけを作り、方向性のレビューをしてくれたPdMの吉野有美佳さん
- デザイナー陣を巻き込んでくれた鈴木智絵さん
- セミナーの開催やブログ執筆を手伝ってくれた遠山佳奈さん、堀次真梨子さん
- サポートとレビューをしてくれたチームのみんな
- 荒崎成彦さん、吉永悠記さん、横内宏樹さん、沓洋和さん
に深く感謝します。ありがとうございました!