LegalOn Technologies Engineering Blog

LegalOn Technologies 開発チームによるブログです。

勉強会の「タダ飯狙い」対策どうするか?より良い勉強会のために参加規約のひな形を公開

こんにちは、LegalOn Technologiesで検索エンジニアをしている志水(@banbiossa)です。 食事つきの勉強会を開催する際に、学び目的ではなく飲食目的、いわゆる「タダ飯狙い」の方に遭遇したという声を最近多く聞きます。 この「タダ飯狙い」や不審者の対策にむけて、リーガルテック企業ならではの取り組みとして、参加規約のひな形を準備しました。 本記事では、取り組むまでに至った経緯や過程、ひな形の詳細、協力してくれた方々についてご紹介できればと思います。

勉強会の治安の悪化

最近エンジニア周りの勉強会を主催したり、参加したりする方々はこの問題に肌感があるかもしれません。一部の勉強会において勉強会目的でない方々が参加しがち、という問題があります。

弁護士ドットコム社の記事

このことは弁護士ドットコム社の記事でも取り上げられています。

この記事の中では「飲食のみ」を目的とする参加者に遭遇したことがある方が半数近くいることがわかります。 この記事の反響は大きく、例えばこのポストでも

共通認知が広まっているにも関わらず、解決されないまま停滞してしまっている

ことに言及しています。

検索技術勉強会における実体験

弊社が主催した検索技術勉強会でも似たような事例がありました。

詳細は伏せますが、勉強会という内容を無視し、「タダ飯狙い」で参加された方に遭遇しまして、他の参加者への迷惑を鑑みてご退席をお願いする場面がありました。

この経験を踏まえ、上記記事の中で推奨されている規約の設定ができないかと考えました。そして弊社のプロダクトでは契約のひな形を提供しています。このことから、広くエンジニアコミュニティに勉強会主催者が規約を定めやすくなるよう、ひな形を提供できないかと考えました。

勉強会用・参加規約のひな形

この課題感をもとに、弊社内でプロジェクトを立ち上げ、「勉強会用・参加規約のひな形」を作成いたしました。

ひな形本文

実際に出来上がった規約のひな形が以下になります。

勉強会参加規約(無償)

本勉強会参加規約(以下「本規約」といいます。)は、●●(以下「主催者」といいます。)が主催する勉強会(以下「本勉強会」といいます。)の運営ルールについて定める規約です。

第1条(参加申込)
1. 本勉強会に参加を希望する者は、以下に定める情報(以下「登録情報」といいます。)を提供のうえ、参加の申込みを行います。
    1. 氏名
    2. 所属
    - 会社員等の場合:会社名、所属部門、役職
    - 個人事業主の場合:主たる事業所【その他必要に応じて記載】
    3. 電話番号
    4. メールアドレス
    5. 本勉強会のテーマに関連する経験
    6. その他主催者が別途指定した情報
2. 参加の申込みを行った者は、本規約に同意したものとみなします。
3. 主催者は、登録情報を、本勉強会の運営に必要な範囲でのみ使用します。ただし、本勉強会において生じたトラブルの解決等のため、登録情報を警察その他の公的機関に提出することがあります。

第2条(参加資格)
1. 参加の申込みに対し主催者から承諾を得た者(以下「参加者」といいます。)は、本勉強会に参加することができます。
2. 次の場合には、本勉強会への参加をお断りすることがあります。
    1. 登録情報に虚偽または誤りがあった場合
    2. 本勉強会参加以外の目的で申込みを行った場合
    3. ウェブサイトへの不正アクセス、メールアドレスの不正使用その他の不正行為を行った場合
    4. プログラム等を用いて自動申込みを行った場合
    5. 本規約に違反することが判明した場合
    6. 過去に主催者が主催する勉強会等に参加し、本規約に違反する行為を行ったことが判明した場合
    7. 主催者が本勉強会への参加を不適当と判断した場合
3. その他、主催者側の事情により本勉強会への参加をお断りすることがあります。
4. 本勉強会へ参加することができるのは、参加者本人に限ります。

第3条(個人情報)
主催者が取得した参加の申込みを行った者および参加者の個人情報は、主催者のプライバシーポリシー(https://www.●●.jp)に基づき利用、管理します。

第4条(著作権等)
1. 主催者は、本勉強会の撮影、録画、録音等(以下「撮影等」といいます。)をすることがあります。
2. 本勉強会の撮影等やその後の編集により発生した著作物等(以下「著作物等」といいます。)の著作権その他の知的財産権は主催者または主催者が撮影等や編集を委託した第三者に帰属します。
3. 主催者は、著作物等を主催者のホームページ、新聞、雑誌等の媒体で公開することや第三者への譲渡、提供またはライセンス等を行うことがあります。また、本勉強会において生じたトラブルの解決等のため、著作物等を警察その他の公的機関に提出することがあります。
4. 参加者は、著作物等に関し、肖像権、プライバシー権、パブリシティ権その他の権利を行使せず、また対価を請求しないものとします。

第5条(禁止行為・退場)
1. 参加者は以下の行為を行ってはなりません。
    1. 本勉強会を妨害する行為や、主催者および他の参加者への迷惑行為、暴力行為
    2. ビジネスや宗教への勧誘行為、政治活動、選挙運動
    3. 他人への誹謗中傷、差別的言動、プライバシーを侵害する行為
    4. 私語、飲食、喫煙が禁止される状況におけるこれらの行為
    5. 主催者に無断での本勉強会の配信、撮影等
    6. 主催者が実施する感染症対策に非協力的な行為
    7. 飲食物の持ち帰り等、提供する飲食物を主たる目的とした参加だと主催者が判断する行為
    8. 法令または公序良俗に反する行為
    9. その他、主催者が不適切と判断する行為
2. 主催者は、禁止行為を行った参加者の参加資格を取り消し、本勉強会からの退場を命じることができます。

第6条(変更・中止)
1. 主催者は、事前の予告なく、本規約の内容を変更することがあります。
2. 主催者は、事前の予告なく、本勉強会の内容、日程を変更し、または開催を中止することがあります。
3. 前二項の場合は、主催者のホームページまたはイベントサイト上での公表その他主催者の選択する方法により、参加の申込みを行った者および参加者へ通知します。

第7条(責任と免責)
1. 主催者は、主催者に帰責性がある場合を除き、本勉強会の変更、中止、参加者が退場となったこと、または本勉強会における参加者の負傷、疾病、紛失、盗難その他の事故による参加者、第三者の損害について一切責任を負いません。
2. 参加者は、主催者または他の参加者その他の第三者に対して損害を与えた場合、その損害を賠償するものとします。
3. 本勉強会において参加者と他の参加者その他の第三者との間でトラブルが発生した場合、参加者は自己の費用と責任において当該紛争を解決するものとします。

第8条(準拠法・管轄)
1. 本規約に関する事項には日本法が適用されます。
2. 本規約または本勉強会に関する紛争については、●●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とします。

ひな形とは?

ここで改めて、契約(規約)のひな形について説明いたします。

世の中には様々な契約、規約が存在しています。その中には例えば秘密保持契約などある程度定型的なものも多々あります。特にそのような定型的な契約については、契約書のひな形を準備しておくことが多いです。法務の方が自社のひな形をドラフトしたり、顧問弁護士等にひな形のドラフトやレビューを依頼することが一般的です。そして、そのひな形を利用して、個々の契約ごとに内容を修正するなどしつつ契約を締結しています。一度ひな形を作成できればある程度楽ですが、まず初めにひな形を作成する業務が法務にとっては負担となります。そこでその業務をテクノロジーの力で解決するため、我々の提供する「LegalOn Cloud」では契約書や各種書式等のひな形ををたくさん用意しております。

LegalOnひな形の一部

活用方法について

ひな形の活用

ぜひこのひな形を主催する勉強会の参加規約のひな形として活用していただければと思います。(必要に応じて、社内の法務の方等へのレビューを依頼いただければと思います)。 残念ながら、今回のひな形を活用したイベントにおける責任については我々は負うことはできず、あくまでイベント主催者様の判断になります。

ただし、社内の勉強会開催の有識者や法務の専門家のレビューを経た、我々も胸を張れるクオリティのひな形です。 もしひな形を活用したという事例がありましたら、ぜひご一報いただければ大変喜びます!

勉強会の運営

実際の勉強会の運営にあたっては、参加規約を定めることで参加者の目線を合わせることができると考えています。それに加え、参加規約が守られていることをスタッフと参加者で確かめて場を作っていくことが必要になります。

この点に関しては、M3さんのイベントにおける行動規範を参考にしたいなと思いました。引用すると

嫌がらせを容認せず、この規範に違反すると思われる行動を見たり聞いたりしたらすぐに イベントスタッフに連絡してください あなたを不快にさせている相手は、そのことに気がついていないかもしれません。 あなたが何か不快に思ったり、嫌がらせを受けたり、その他何か懸念に思うことがあったらすぐに イベントスタッフに教えてください。 また、誰かが誰かを不快にさせたり、嫌がらせを行っているのを見聞きした場合も、 すぐにイベントスタッフに教えてください。

エムスリーアンケートシステムの技術:Google Cloud - connpass

皆で力を合わせ、参加した方々にとって有益なものとなる勉強会を作り上げていきたいと思います!

勉強会用・参加規約ひな形プロジェクトの全容

今回のひな形作成は、法務・法務開発・エンジニアリングの部署それぞれからメンバーが集まり、プロジェクトとして推進しました。 どのようにしてこの規約を作成するに至ったか、その経緯を紹介いたします。

シャッフルランチでCTOに投げかける

7月11日に上記の弁護士ドットコム社の記事が掲載され、すぐイベントチームのメンバーがキャッチしてチームに投げてくれていました。その後社内でのシャッフルランチがあり、私がたまたまCTOの深川さんとご一緒したので、帰り道で勉強会用の参加規約のひな形を作って公開したいという話を持ちかけると、その場でGoを出してくれました。

法務・法務開発の巻き込み

このひな形プロジェクトを実現するために、CTOの深川さんが社内にいる弁護士たちを繋いでくれました。弊社には一般的に法務と呼ばれるチームと、法的コンテンツを企画・開発する法務開発と呼ばれるチームが存在し、それぞれに弁護士が複数名在籍しています。それぞれのチームの弁護士4名がプロジェクトに協力してくれることとなり、プロジェクト用のSlackチャンネルを作って議論を詰めました。特になぜこのような取り組みをやるべきか、どのように発信するか、またどのような体制で進めるかが議論のポイントとなりました。早速ひな形のドラフト作成とレビューを進めていくため、週次の定例をキックオフしました。

ドラフト→レビュー→公開

週次の定例をキックオフしてからは、法務開発の弁護士にドラフトを作成していただきました。 定例の中で勉強会の運営の実態や参加者問題についての肌感を共有して、ひな形の方向性をチームで考えることができました。 ドラフトが上がってからは法務の弁護士にレビューをお願いし、規約の条項ごとにその条項を定めた背景やこれを読んだ参加者側の心情を加味しながら、多角的な観点でブラッシュアップすることができました。

普段の業務に加えてこのプロジェクトを進めることになり、協力してくださった弁護士の皆さんには本当に感謝しております!

ひな形作成時の想定

今回の規約のひな形に関しては、一般的な無料の勉強会を想定し、なるべく勉強会の主催者がコピペでそのまま使えること、シンプルであり一読して理解しやすいこと、また connpass の画面にそのまま掲載して違和感のないことなどを考慮して作成しました。このままお使いいただいてももちろん問題ないですが、有料の勉強会やよりクローズドの会など、開催する勉強会の性質によっては、条項の追加や修正などのカスタマイズをしていただくと、より適切な勉強会の運営が可能となると思います。

もしご意見等あればぜひフィードバックをお待ちしております!

Acknowledgement

ここに至るまで、多くの方に助けられました。チームとして成し遂げた仕事であり、改めて1人1人感謝させてください。

検索技術勉強会を開催してきた @takuya_b, @johtani, @minoru_osuka, @ikawaha, @paki0o をはじめとするスタッフの面々。LegalOnでの会場提供を支えてくださっている広田さん、蒲原さん、星野さん。 シャッフルランチを企画してくれた藤田さん。記事をキャッチしてくれた荒木さん。 ランチでの雑談から10分で企画を発信していただいた深川さん。プロジェクトの趣旨を詰めて実務者をアサインいただいた弁護士の春日さん、奥村さん。 実際のひな形のドラフトとレビューをしていただいた弁護士の今野さん、柄澤さん。

改めて皆様のご協力や普段からのお仕事がなければできなかったプロジェクトでした、ありがとうございました!

まとめ

今回はエンジニア勉強会をより良いものにするために参加規約のひな形を公開した経緯についてまとめました。

「LegalOn Cloud」では今回の参加規約のひな形をはじめ、多数のひな形を用意しております。もっとも活用されているものとしては、業務委託契約書やNDAなどがあります。今回のプロジェクトに併せて勉強会用の参加規約のひな形と類似するような、イベント参加規約のひな形も追加を予定しております! また、「LegalOn Cloud」では皆様のニーズに合わせ新たなひな形を随時追加しております。契約や法務にまつわる仕事をテクノロジーでアップデートしたいというお考えがありましたら、ぜひ活用をご検討ください。

最後に法務部門、法務開発部門、検索・推薦チームでは一緒に働く仲間を探しております!ぜひこのような取り組みや、過去の勉強会の内容を通じて興味を持たれた方は、カジュアル面談や面接をお待ちしております。